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かさ歯車とは、交わる2軸間に運動を伝達する円すい形の歯車です。歯すじの形により、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、ゼロールベベルギヤ、はすばかさ歯車などに分類されますが、要するにたがいにすべることなく接するピッチ円すい面をもった歯車です。
歯数z 1の小歯車と歯数z 2の大歯車が軸角Σ(交わる2軸の角度)にてかみあうとき、それぞれの基準円すい角δ1、δ2は次のように計算されます。

この軸角Σは直角が最も多いのですが、それ以外にも鋭角や鈍角で使用されることもあります。このように鋭角や鈍角で使用されるかさ歯車のことを斜交かさ歯車といいます。図4.8は鈍角かさ歯車を示しています。
軸角Σ= 90°のとき、式(4.20)は次のようになります。

軸角Σ= 90°で速度比z 1/z 2 = 1 のかさ歯車のことをマイタ歯車といいます。

図4.9にはかさ歯車のかみあいを示しました。
このようにかさ歯車のかみあいは、必ず相手歯車と対で考えなければなりません。決められた歯数の組合せ以外では、正しくかみあわせることはできないのです。
かさ歯車のかみあいは、図4.9のように正面を基準に考えれば、平歯車のかみあいに近似させることができます。

図4.8 かさ歯車の基準円すい角

図4.9 かさ歯車のかみあい

(1)グリーソンすぐばかさ歯車
すぐばかさ歯車とは歯すじが直線で円すい頂点に向っているかさ歯車のことをいいます。
このすぐばかさ歯車には、グリーソンすぐばかさ歯車と標準すぐばかさ歯車という2つの代表的な方式があります。
ここで紹介するグリーソンすぐばかさ歯車の歯形は、全歯たけ h = 2.188m 、項げき c = 0.188m 、有効歯たけ h '= 2.000m の並歯です。
この歯車の特徴としては

○	転位歯車です。小歯車は正転位、大歯車は負転位することによって強さをバランスさせています。ただし小歯車と大歯車の歯数が等しいマイタ歯車は転位していません。
○	平行頂げきです。歯先円すい母線と相手歯車の歯底円すい母線は平行です。

軸角Σ= 90°におけるグリーソンすぐばかさ歯車の切下げ防止の最少歯数を表4.16に示します。

表4.16 切下げ防止の最少歯数

基準圧力角	歯数の組合せ　　z 1/z 2
(14.5°)	29/29以上	28/29以上	27/31以上	26/35以上	25/40以上	24/57以上
20°	16/16以上	15/17以上	14/20以上	13/30以上
(25°)	13/13以上

表4.17にはグリーソンすぐばかさ歯車の計算を示します。ここで計算する寸法及び角度は図4.10に示します。
表4.17は直交軸だけでなくグリーソン斜交すぐばかさ歯車の計算にも使えます。
グリーソン社では、クラウニングしたすぐばかさ歯車のことをコニフレックスギヤと呼んでいます。このコニフレックスギヤは、組立時の誤差による悪い片当たりを防ぐ為には、非常に有効です。

図4.10 かさ歯車の寸法および角度

表4.17 グリーソンすぐばかさ歯車の計算

番号

計算項目

記号

計算式

計算例

小歯車(1)

大歯車(2)

軸　　　角

90°

モジュール

基準圧力角

20°

歯　　　数

基準円直径

120

基準円すい角

δ1

δ2

Σ-δ1

26.56505°

63.43495°

円すい距離

67.08204

歯　　　幅

R /3又は10m 以下が望ましい。

歯末のたけ

h a 1

h a 2

2.000m -h a 2

4.035

1.965

歯元のたけ

h f

2.188m - h a

2.529

4.599

歯元角

θf

tan^-1(h f / R )

2.15903°

3.92194°

歯末角

θa 1
θa 2

θf 2
θf 1

3.92194°

2.15903°

歯先円すい角

δa

δ + θa

30.48699°

65.59398°

歯底円すい角

δf

δ - θf

24.40602°

59.51301°

外端歯先円直径

d a

d + 2h a cosδ

67.2180

121.7575

円すい頂点から外端歯先まで

R cosδ - h a sinδ

58.1955

28.2425

歯先間の軸方向距離

X b

19.0029

9.0969

内端歯先円直径

d i

44.8425

81.6609

グリーソンすぐばかさ歯車の特徴は、転位歯車であることです。表4.17のグリーソンすぐばかさ歯車の歯形と、表4.18の標準すぐばかさ歯車の歯形を図4.11に示します。


図4.11 すぐばかさ歯車の歯形

(2)標準すぐばかさ歯車
標準すぐばかさ歯車の歯形は並歯で転位をしていません。その計算を表4.18に示します。

表4.18 標準すぐばかさ歯車

番号

計算項目

記号

計算式

計算例

小歯車(1)

大歯車(2)

軸　　　角

90°

モジュール

基準圧力角

20°

歯　　　数

基準円直径

120

基準円すい角

δ1

δ2

Σ-δ1

26.56505°

63.43495°

円すい距離

67.08204

歯　　　幅

R /3又は10m 以下が望ましい。

歯末のたけ

h a

1.00m

3.00

歯元のたけ

h f

1.25m

3.75

歯元角

θf

tan^-1(h f /R )

3.19960°

歯末角

θa

tan^-1(h a /R )

2.56064°

歯先円すい角

δa

δ+θa

29.12569°

65.99559°

歯底円すい角

δf

δ-θf

23.36545°

60.23535°

外端歯先円直径

d a

d +2h a cosδ

65.3666

122.6833

円すい頂点から外端歯先まで

R cosδ-h a sinδ

58.6584

27.3167

歯先間の軸方向距離

X b

19.2374

8.9587

内端歯先円直径

d i

43.9292

82.4485

表4.18は直交軸だけでなく標準斜交すぐばかさ歯車の計算にも使えます。

(3)グリーソンまがりばかさ歯車
まがりばかさ歯車とは図4.12のように、歯すじが曲線であるかさ歯車のことであって、歯すじd c とピッチ円すい母線とのなす角をねじれ角といいます。歯幅中央におけるねじれ角を中央ねじれ角βm といい、単にねじれ角といった場合はこのねじれ角をさします。
表4.21に示したグリーソンまがりばかさ歯車の計算式は、スプレッドブレード法やシングルサイド法などにより創成歯切りされる場合のものです。上記とは異なる歯切法による場合は、計算式も異なります。
ここで紹介するグリーソンまがりばかさ歯車の歯形は、歯たけ h = 1.888m 、頂げきc = 0.188m 、有効歯たけ h '= 1.700m の低歯で、モジュール2.1以上の歯車に使うことができます。

図4.12 まがりばかさ歯車(左ねじれ)

軸角Σ = 90°、歯直角圧力角αn = 20°におけるグリーソンまがりばかさ歯車の切下げ防止の最少歯数を表4.19に示します。

表4.19 切下げ防止の最少歯数

β= 35°

歯直角圧力角	歯数の組合せ　　z 1/z 2
20°	17/17以上	16/18以上	15/19以上	14/20以上	13/22以上	12/26以上

小歯車の歯数を12よりも少なくする場合は、表4.20により歯形の寸法を決めます。

表4.20 小歯車歯数12未満のまがりばかさ歯車の寸法

小歯車歯数　　　　　　　z 1		6	7	8	9	10	11
大歯車歯数　　　　　　　z 2		34以上	33以上	32以上	31以上	30以上	29以上
有効歯たけ　　　　　　　h '		1.500	1.560	1.610	1.650	1.680	1.695
歯たけ　　　　　　　　　　h		1.666	1.733	1.788	1.832	1.865	1.882
大歯車の歯末のたけ　ha 2		0.215	0.270	0.325	0.380	0.435	0.490
小歯車の歯末のたけ　ha 1		1.285	1.290	1.285	1.270	1.245	1.205
大歯車の円弧歯厚　　s 2	30	0.911	0.957	0.975	0.997	1.023	1.053
	40	0.803	0.818	0.837	0.860	0.888	0.948
	50	－	0.757	0.777	0.828	0.884	0.946
	60	－	－	0.777	0.828	0.883	0.945
歯直角圧力角　　　　　　　　　αn		20°
ねじれ角　　　　　　　　β		35°～40°
軸　　　角　　　　　　　 Σ		90°

(注) この表の値は m = 1 のときのものです。

グリーソンまがりばかさ歯車の計算を表4.21に示します。

表4.21 グリーソンまがりばかさ歯車の計算

番号

計算項目

記号

計算式

計算例

小歯車(1)

大歯車(2)

軸　　　角

90°

外端正面モジュール

歯直角圧力角

αn

20°

中央ねじれ角

βm

35°

歯数 (ねじれ方向)

20 (L)

40 (R)

正面圧力角

αt

23.95680

基準円直径

120

基準円すい角

δ1

δ2

Σ-δ1

26.56505°

63.43495°

円すい距離

67.08204

歯　　幅

0.3R 又は10m 以下が望ましい

歯末のたけ

h a 1

h a 2

1.700m - h a 2

3.4275

1.6725

歯元のたけ

h f

1.888m - h a

2.2365

3.9915

歯元角

θf

tan^-1(h f / R )

1.90952°

3.40519°

歯末角

θa 1
θa 2

θf 2
θf 1

3.40519°

1.90952°

歯先円すい角

δa

δ+θa

29.97024°

65.34447°

歯底円すい角

δf

δ-θf

24.65553°

60.02976°

外端歯先円直径

d a

d + 2h a cosδ

66.1313

121.4959

円すい頂点から
外端歯先まで

R cosδ- h a sinδ

58.4672

28.5041

歯先間の軸方向距離

X b

17.3563

8.3479

内端歯先円直径

d i

46.1140

85.1224

表4.21は直交軸だけでなくグリーソン斜交まがりばかさ歯車の計算にも使えます。
歯車のねじれ方向の組合せとしては、右ねじれと左ねじれのように異なる方向の歯車を組合せます。

(4)グリーソンゼロールかさ歯車
図4.13のように、ねじれ角βm が零であるまがりばかさ歯車のことを、ゼロールかさ歯車といいます。
この計算は、グリーソンすぐばかさ歯車の計算と同じですから、表4.17を使うことが可能です。

ねじれ方向は右ねじれと左ねじれの歯車を組合せて使用します。図4.13は、左ねじれ歯車を示しています。

図4.13 ゼロールかさ歯車(左ねじれ)